Last Update 2001. 3. 11

LIZARD! Live at 新宿LOFT
MOMOYO KATSU KOH WAKA BELLE

メイキング・オブ・『東京ROCKERS』Vol.1
『MODERN BEAT』 30秒試聴
『MARKETING RESEARCH』 30秒試聴

  • RECORDED IN THE MOBILE STUDIO
     1979年3月11日(日)、出演5バンドのメンバーたちはやや緊張した面もちでロフトの前で集合写真を撮影している。この日、LIZARDはCBS・ソニーがアルバム用に録音するのとは別にバンド独自での録音を試みた。
     当日ロフトの外にモービル(可動)スタジオが設置され、地下にあるロフトから楽屋口(裏手のドア)をぬけ、階段経由で多芯ケーブルをひっぱり、モービル手前でサブミキサー(モニター回線)と内部のミキサー卓用に分配した。このうちモニター回線を使い、モービル・スタジオの中でライブを(1)マルチ・トラック・レコーダーと(2)デンスケ(注:ソニー製のカセット・テープ・レコーダー)で録音した。 このモニター回線はステージまで戻してやり、そこで舞台わきのサブPAで出力。 さらに、そこから本来のメインPAに戻してライブ・ハウス内のスピーカーを鳴らしていた。
    開演前の集合写真。中央奥で壁を背にしているのがワカ
    左手奥で“しぶしん”の看板の下で後ろを向いているのがカツ


     このようにモービル・スタジオ内では2種類のハードでライブを録音していた。このうち(1)モニター回線を分岐して録音したマルチの方は、音源を4チャンネルのグループに分けTEAC(ティアック)のオープン・リール・テープレコーダーで受けて録音した。ただ4つのグループではシンセサイザー等があるLIZARDのようなバンドはチャンネル数が足りなくなる。実際『T.V.マジック』のAメロで使われるヴォコーダの音は受けることができなかった(Session1のみ)。もちろんバンドの各パートの音で手一杯だから、バンド独自の録音テープに客席マイクで収集したノイズなどをミックスすることはできなかった。
     一方、(2)デンスケの方は出演バンドの曲や個性など知る由もないアシスタントがミキシングを担当していたため、かなり悲惨な音で録音された。とはいえこのデンスケのテープは各バンドのライブが全て収録され、ミックスダウン時の参考用に使われた。
    集合写真左からツネマツ、CHKO-HIGE、ЯECK
    FRICTIONトリオ。その後方にいるのが左からカツベル
     当時LIZARDのように録音機材を持ち込み録音スタッフをつけて独自にレコーディングするようなバンドは殆どいなかった。他のバンドはこういったレコーディングにとりわけ興味がなかったからだ。そんなわけで、LIZARD以外の4バンドは、この日のライブをバンド独自でキッチリとレコーディングしていないと思われる(FRICTIONはバンド側がライブをマメに記録していたので録音していた可能性はある)。ただ前述のように、デンスケで録音したラフ・ミックス・テープなら現存する可能性はある。
    LIZARD!セット・リスト
    (1979.3.11/新宿LOFT)
    Session1 (14:00〜)Session2 (18:00〜)
    1.ロボット・ラブ 1.ロボット・ラブ
    2.レクイエム 2.レクエム
    3.モダン・ビート※ 3.モダン・ビート
    4.マーケット・リサーチ※
    (STRANGLED Version)
    4.マーケット・リサーチ
    (STRANGLED Version)
    5.ガイアナ 5.ガイアナ
    6.T.V.マジック 6.T.V.マジック
     ちなみに1999年11月にモモヨがインターネット上に アップしたこの日のライブ音源(『モダン・ビート』『マーケット・リサーチ』)は、このオープン・リールで受けた音をメタル・ポジションのカセット・テープに落としたものが元になっている。2曲ともセッション1(昼の部)での演奏だ。『マーケット・リサーチ』は、セッション2の方が低音に深みがあり良好な録音状態ではあるが、ワカのベース音はセッション1のの方が乾いた音でよりJ.J.バーネルに近くて、文字どおり“STRANGLED Version”に仕上がっている。
     この『マーケット・リサーチ』という曲は、その誕生の瞬間から“STRANGLED”だった。モモヨJ.J.バーネルと会ってからTHE STRANGLERSに捧げて作ったのがこの曲。当初はこのバージョンをCBS・ソニーの『東京ROCKERS』で発表し、デビューアルバム(『LIZARD』)でオリジナルものを発表する、というプランがあった。ただ79年当時は、外国のバンドのパクリやコピーバンドがメジャーデビューしてしまう時代でもあり、そんな環境下であらぬ誤解を避けるためにやむなく発表をさしひかえた、といういきさつがあった。『マーケット・リサーチ』は楽曲そのもの、つまり歌詞やメロディーはLIZARDオリジナルだが、各パートのフレーズや癖が“STRANGLED”(=ストラングラーズ的)な仕上がりになっている。
    「ちょっと、ストラングラーズ風にやってみよう」
    というリハーサルでのモモヨの一言でそれができてしまうオリジナル・LIZARDのある種の凄さは20年経った今、MP-3という媒体を通じてでも十分に伝わってくる。
     その他の曲については、まず『東京ROCKERS』に収録された2曲『ロボット・ラブ』『レクイエム』はセッション2のトラックが採用された。実際この2曲はセッション2の方が出来がよい。それから『T.V.マジック』はセッション2の方が素晴らしい出来だが、前述の通りAメロ部分のヴォコーダのパートが録音されていないのが残念だ(セッション1にはヴォコーダ音が含まれテンポが僅かだが速め)。(Vol.2につづく)

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