AUTO-MOD presents
Future Message from the First Punk Generation
Live at Shibuya DeSeO 2002.11.02


昨年12月の21世紀第1弾のLiveと同じくAUTO-MOD主催のイベント。出演バンドは「東京ROCKERSの人たち」と言うと"懐かしの〜"に聞こえるかもしれないが(とんでもございません)現役バリバリで年を重ねるごとに激しさを増す(!)3バンドにLIZARDを加えた4バンド。時計を1979〜80年に戻すと今回出演の4者はFRICTION、LIZARD、マリア023〜AUTO-MODというバンドで活動していた方々。そのせいか客の年齢層はいつになく高め(失礼!)だったように思える。調べてみると、チコヒゲ/ジュネ/恒松正敏/モモヨ の4人が同じ日の同じステージに立つのは意外にも今回が初めてかもしれない。
出演バンド
●チコヒゲ & THE UNIT
●AUTO-MOD
●恒松正敏Group
●LIZARD Ω


LIZARD - set list
1. セレブレーション/穴居人
2. 亡命者/ニジンスキーのために……
3. バビロニア
4. 記憶/エイシャ
5. マーケット・リサーチ
6. 白いドライブ
7. サ・カ・ナ("Zeke32" version)

LIZARD Ω are...
・MOMOYO(Vocal)
・K. MIZUSAWA(Guitar)
・R. YANAGIHARA(Bass)
・J. SHINOHARA(Drums)


今回のモモヨ・バンドの正式名称は「project LIZARD type Ω」。LIZARDの活動形態は弾き語り(3月のLa.mamaで披露)やATPとのコラボレーションの「α」とスピアメンとの「Ω」の2つに大別される。詳細はこちらを参照。名称はさておき、3月と5月のLa.mamaで見せたモモヨ+SPEARMENのバンドだ。

LIZARDの出演は4番目で大トリ。チコヒゲ、AUTO-MOD、恒松の3バンドとも予想通りラウドなサウンドで妥協のないステージを見せてくれた。当然モモヨ+SPEARMENに期待するのは超攻撃的システム(週刊プレイボーイ)。左耳がキーンとしているのを気にしていると、ステージ前のスクリーンが上がり、現れたのは抑え気味の青い照明をバックにした4人。ベースの柳原がハーモニクスで音を繰り返す。ギター、シンバルが重なるイントロが終わり、ゴリゴリのベース・フレーズが印象的な1曲目の『セレブレーション』に入る。
3月のLa.mamaでもオープニングを飾った曲だ。La.mamaでは正直言ってモモヨのヴォイスがSPEARMENの轟音に押されていたが、今回はモモヨの声は前に出ていた(髪もちょっと伸びましたね)。まだ発声は手探り状態だがこれまでの3ステージよりは遥かに良い。ヘヴィなセレブレーションに続いて水沢のギターがエフェクトで空間的な音を奏でる『亡命者』へ移る。伝説のバレエダンサー、ニジンスキーと自らを重ね合わせたかのような詩と抑揚のある曲構成が感動的なナンバーだ。3曲目も3rdアルバムから『バビロニア』。この曲はモモヨ+SPEARMENでは初めての演奏。
 「じゃぁ、次はジョーイに捧げるバラード...」
というMCで始まったのは『エイシャ』。2001年4月に亡くなったジョーイ・ラモーンとエイシャの繋がりは不明だが、天国のジョーイに届いただろうか。脱線するが、左の写真は『月刊ロック・ステディ』1980年9月号でモモヨとジョニーが対談した時の模様。ところでモモヨのMCを
 「じゃぁ、次はジョンイルに捧げるバラード...」
とアジア的に解釈した方もいた。ジョンイル〜Jong Ilとは言うまでもなく隣国の独裁者・金正日のこと。扉の向こう側の、赤い半島で人々を鞭打っていた見知らぬ男=僕の祖先は、自分の子供、孫が逆に鞭打たれることになるとは想像もしていなかった。暴力は復讐の歴史の始まり。もちろん「バラードを捧げる」などという表現はモモヨ流のシャレだろう。ジョンイルに捧げるのであれば『エイシャ』のオルタナティヴversion(『LIZARD III』収録)で追加された詩・・・絶望を追い出せ/悲しみを追い出せ/死の影を追い出せ/俺たちの王国から・・・を虚しく響かせてやるか、それとも『レクイエム』か。おっと、書いていて段々訳が判らなくなってきたので(汗)この辺で。
『エイシャ』のエンディングのベース・フレーズが8ビートを刻みはじめると、1stアルバム収録の『マーケット・リサーチ』になだれ込む。この曲はシンセサイザーを前面に押し出したオリジナルversion、ストラングラーズに捧げたStrangled version、1980年夏以降の4人編成で演奏されたPunk versionなどがあるが、オメガversionはオリジナルを3ピース・アレンジにした太いビートでSPEARMENらしさが光る。歌詞は今にピッタリかもしれない。そういえばブレイクでタイミングをあわせて「ウォー!」と叫んだ客がいたが、79年のLiveテープで聴くのと同じタイミング。きっと彼は旧いファンだろう(笑)。
MCを挟む様子もなく、たて続けに次の曲へ。ベースが『白いドライブ』のリフを刻み始めるとギターがフィードバックで応える。この曲は3月のLa.mamaでATPとのバンド「α」がかなりアレンジを変えて演奏している。オメガversionは原曲が持つダークなイメージを残しつつ、篠原の前のめりなビートが淡々と続く中ギターのインプロヴィゼーションが続くアレンジが施された。
「...何て言ったらいいのかな、一応リザードの一種として、、、リザードの亜種のオメガというセットで今日はやってるんですけど。えーっと、今日は多分次が最後になると思うんだけど。ホームページを読んでいる方はわかると思うんだけど、ジーク32っていう名前の戦闘機についての歌なんです。ジークっていうのは、皇紀0年(※註)に生まれた戦闘機でもあって、それで"ゼロ式"とも呼ばれていますけど、それが海の底で朽ち果てるというか破壊されて、その骸の中に禍神(マガツミ)が棲みつくというようなイメージの詩を考えてみました。それが、、、ま、いいからやってみようかな。『サ・カ・ナ』です。」

モモヨのMCで紹介されたのが、この日のハイライトとも言うべくラスト・ナンバー『サ・カ・ナ』。今回『サ・カ・ナ』はセルフ・カヴァーではなく、セッションであり曲に新しい角度から光線を当てる、というものだった。サカナ・セッションのコアとなるモモヨの散文詩はwebサイト「バビロニック・ドットコム」日記で、ライブの前日深夜に公開された。随筆『蜥蜴の迷宮』でモモヨは、『サ・カ・ナ』が単に水俣病を生んだ国政、大企業の論理を批判したものではない、と記述しているが、今回の散文詩ではこの曲が持つ壮大なストーリー性を浮かび上がらせるためるために、旧日本軍を代表する戦闘機をモチーフに用いている。予備知識として「皇紀」についてはこちらのサイト「皇紀2600年」、零式戦闘機については「零式艦上戦闘機の世界」が参考になる。 ※註皇紀2600年=昭和15年
幻想的なライティングとスペイシーなギターをバックに詩を読み始め、そのままリズム・イン。web上で公開している1985年のサカナ・セッションとほぼ同じヴァージョンだ。前半は幻想的なイメージのままミディアム・テンポで、後半はオリジナルver.のビートに乗せて。 ただ残念なのは『メメントモリ』の時同様、囁くように、というかじっと息を殺すように詩を読んだので、ライブ会場では殆ど聴き取れなかった。私はweb上で読んでいたのでストーリーをイメージしながら曲を聴けましたが、そうでない限りかなり伝わりにくかったと思う。
「♪ボ・ク・タ・チ・サ・カ・ナ」で幕を閉じ、客からアンコールの拍手が鳴るが、PA席からジュネがマイクで「今日はこれで終わりです」と告げた。ジュネは「来年ロフトあたりでこのメンツ+αで何かオモシロイことをやろうと思ってます」とも言っていたので楽しみだ。

今回のイベント全体を振り返ると、やはり主催者のジュネのバイタリティに感心してしまう。キャリア20年超でもどん欲に他から影響を受け、また影響を与えながら自らのAUTO-MODも変容させ、周囲を巻き込むパワー。このライブの半月前にはスウェーデンのブラックメタルバンド「DARK FUNERAL」の日本公演でゲスト出演したり、1週間前にはハロウィンにかこつけて渋谷でバカ騒ぎパーティ&ライブを敢行したようだし。モモヨを"師匠"と仰ぐ(笑)ジュネには今後も要注目。で、AUTO-MODのライブに行く時は、必ず受付で「AUTO-MODで予約しました」と申告しましょう。

LIZARD Ω 次回LIVE
2002.12.21(Sat) start 18:30
"LABSICK-LAB 019" @秋葉原 CLUB GOODMAN →map
共演:SKYFISHER/ZENI GEVA/O-ne/bossston cruising mania



チコヒゲ & THE UNIT
・チコヒゲ(Vo.+ Drums)
・サイトウゴウ(Guitar)
・イマイアキノブ(Bass)

出演予定だった2001年12月のLIZARD再始動第1弾Live直前にチヒコゲの怪我で長らく活動休止だったが、この日やっとステージにもどってきた。ヒゲのドラムは前半、体がなまっているのかキレがよくなかったが後半は徐々にヒートアップ。予定の30分を終えてステージを去ろうとする他のメンバーを呼び止め、もう1曲演奏する、という場面も。今回からベースは元FRICTIONのギタリスト、イマイアキノブに。ギターは前からだが、FRICTIONでイマイの前にギターを担当していたサイトウゴウ。ってことは、3人とも元FRICTION(汗)。どうりでビートがキイてるわけだ。

AUTO-MOD
・ジュネ(Vocal)
・オギー(Guitar)
・MASA(Bass)
・NAOKI(Drums)

メンバー・チェンジを繰り返すAUTO-MODの第?期メンバー。新しいギタリストは噂には聞いていたが巨漢でビックリした。ある意味MODにピッタリなルックスと、それから肝心なギター・サウンドはジュネの望む「超ヘヴィ」。前任のSHOWが結構いい感じだったので余計に期待がかかるところ。個人的にオギーのコーラスのdeath声に一票。それからなぜかジュネが(ほぼ)すっぴん、Tシャツ+Gパンという楽屋でしか拝めない姿で登場。意外とカワイイと思ったのは私だけか(笑)。ま、それでかえって肩の力が抜けて演奏が良かったような気もする。モモヨproduceでスタジオ制作のアルバムを出してみてはどうだろう?LIVE中心だと地方のコたちに音が届かないしなあ。
恒松正敏Group
・恒松正敏(Vo.+ Guitar)
・飼沼丞ニ(Bass)
・藤掛正隆(Drums)

この日、一番とんがってた(髪もちょっと逆毛立て)のが恒松バンドじゃないかな。ドラムがBAKIの「#9」やツインドラム・バンド「13oz.」の藤掛に替わって、サウンドがよりシャープになった。その影響か恒松のギターもラウドになった気がした。リフが変則的なリズムをとる『Dance on Ice』でギターが1拍ズレてその後元に戻らず、というヒヤヒヤする場面もあったが、とにかく最後までトバしまくった。『ニガシタハジマリ』はテンポを落としてグっとタメるVersionになったな〜と思ったら突然オリジナルの8ビートになる展開で10分近くの大曲になった。このメンバーで新しいアルバムを作って欲しい。今さら気付いたが、アルバム・タイトル曲『Lunatic Animal』はCD未収録曲。それにしても恒松さん、出演前に結構飲んでたようで、MCでフラフラしてました(汗)。

1. 乾きの海
3. Blue Dress On You
4. Dance On Ice
5. ニガシタハジマリ
6. Lunatic Animal
7. All of The Night

(敬称略)

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